ラブライブ!スーパースター!! 考察 第8話「結ばれる想い」考察 ~時空を超えた過去作との結びつき~
どうも、皆さんうぃっすです。
さて、おっさんのどうでもいい挨拶など華麗に無視していただいて、早速本題に入りたいと思います。何しろ今回も語ることが山ほどあるのです。
いよいよ葉月恋の諸々の事情と、結衣ヶ丘の過去も明らかになりました。それだけではなく、なんとなんとスクールアイドルの歴史の片鱗までも今回で垣間見れたのです。
今回の記事では、葉月恋と葉月花(エンドロールでようやく漢字がわかりました)、そして結衣ヶ丘を軸にして考察と言う名の妄想を進めていきます。
※ここから先はラブライブ!スーパースター!!第8話とラブライブ!サンシャイン!!の重要なネタバレを含みます。まだ本編を視聴していない、またはネタバレが嫌だという人は決して見てはいけません。マジで責任は取りませんので、悪しからず。
※基本的にこの考察はただのおっさんの妄想です。ひとりのラブライバーの解釈であり、これが「正解」であるなどと言うつもりは全くございません。あくまで、妄想・ジョークの類として受け取って頂ければ幸いです。
- ⊡ 明かされる理由
- ⊡ 音楽科VS普通科
- ⊡ 元祖スクールアイドル 葉月花
- ⊡ μ'sの再現
- ⊡ 心の鍵
- ⊡ 想いよひとつになれ
- ⊡ Aqoursの再現
- ⊡ 「みんなで叶える」 スクールアイドル性
- ⊡ スーパースター!
- ⊡ タイトル「結ばれる想い」とは
⊡ 明かされる理由
「神宮音楽学校の生徒だった母は、同じ場所に再び学校を作りたいと願い続けていました」
冒頭いきなり語りだす恋。話が長いので要約すると
恋の母親である葉月花は結衣ヶ丘の前身である神宮音楽学校の生徒で、廃校になった学校を復活させるために創立まで漕ぎつけた。しかし、学校創立に反対だった恋の父親は家を出ていき、葉月花自身は無理が祟って帰らぬ人となってしまった。恋は海外にいる父親と住むことを断り、母親が創った学校を一番の学校にするため資金難に苦しみながらも奮闘していた。
ってところでしょうか。要約が下手ですみませんねぇ。今までの恋の厳しい態度の裏にある、あまりにも過酷な事情を知ったかのんたち。一気に彼女を見る目が変わってしまいます。
さてさて、早速ですが上の画像を見てください。動物が何かしらのキャラクターのパートナー的に描かれている作品は多いですが、葉月恋の場合もそうですね。全部が全部そうだとは言いませんが、そのパートナーの動物はキャラクターの本音を表している場合が多いです。(有名なところだと、「魔女の宅急便」なんかがそうですね。今度「魔女の宅急便」を見る機会があれば、ジジの発言に気を付けて観てください。意外な発見があります)
「今日話したことは、一切口外しないでくれませんか?」
「生徒が不安になったり、結衣ヶ丘に入学したことを後悔して欲しくないのです。お願いします」
このように恋はかのんたちにお願いしますが、犬のチビが彼女の本音だと考えて見ましょう。
このシーン、やたらとチビがかのんにベタついているのが印象に残った方もいるはずですが、これが恋の本音です。つまり、恋は本当はかのんを頼りにしたい、甘えたいと思っているという本音が、チビを介して表現されています。
更には、チビはかのんに思い切り寄りかかっていますが、恋は対照的にかのんを背にしています。つまり、気持ちとして恋はもうかのんに寄りかかっているのですが、それをフィジカルに表現できないということになります。今後もこの手法は大事な場面で色々と使われそうな気がします。
話を戻しましょう。冷静に状況を整理すると、恋はいま経済的にも余裕がなく(貧しいとまでは断言できませんが)、更には学校の立場も、前回学園祭を音楽科優先にすると発表したことから相当苦しい立場にあります。そんな苦しい状況でも、優先して考えるのはやはり結衣ヶ丘の事でした。どれだけ彼女が母親を、学校の事を想っているのかがわかります。
カットが変わり、恋の自宅。かつて神宮音楽学校に通っていた母の写真をみつめながら、恋はこう呟きます。
「お母様、あの時私に何を……?」
あの時というのはもちろん、恋の幼少期のシーンで、葉月花が何かを恋に言っていたシーンの事を指しています。
あの時のシーンのセリフが無音だったのは、やはり恋がその内容を覚えていないからでした。とはいえ、前回の時点で一応内容のヒントはありました。後述するとか言うと書くのを忘れてしまうので今書きます。
前回第7話では上記のカットの後に恋が掲示板にプリントを画鋲で留めるカットに映っていました。
このカットも話の流れだけを考えると必要のないカットの様にも思えます。敢えて入れているのは、それなりの意味があるからだと筆者は考えています。
このカットは文字通り、自分の気持ちに「釘を刺している」わけです。この場面で実際の釘を出すとあまりにも不自然なので、画鋲が使われているわけですね。その気持ちとは即ち、「どんな手段を使っても学校を一番にする」というものであり、その気持ちを打ち消すような、ほぼ反対の意味を葉月花が言っていたと予想できました(過去形)。なんでそれを前回の記事で書かなかったんですかね~。忘れてました……(汗
かのん「じゃあ、音楽科だけで学園祭を行うっていうのも……」
千砂都「たぶん、入学希望者が少なかったんじゃないかなぁ?」
可可「優秀な音楽科だけの方が注目を集められる……?」
すみれ「苦肉の策ってこと?」
事情を聞けば、それなりに納得は出来ると言うメンバーですが、学校の生徒たちは勿論そんなことを知る由もありません。案の定、普通科の生徒たちのヘイトがすぐさま恋に向かっていきます。
⊡ 音楽科VS普通科
「創立者の娘だからって、学校はあなたのものじゃない!」
署名活動を行っている生徒から厳しい一言が飛び出しますが、恋は表向きは意に介そうとしません。何も知らない普通科の生徒からしたら、横暴で酷い態度だと不快に思うだけですが、事情を知っているメンバーや視聴者からは恋の苦しい胸の内と、一度決めたらやり通そうとする強い意志の両方が見えます。
この状況を見かねたかのんは遂に動きます。なんとか恋の誤解を解けないかと、音楽科と普通科の生徒に話をします。しかし、音楽科の生徒たちは「音楽科がメインなのは今回だけ。普通科の生徒はワガママなんじゃないか」と主張し、
一方で普通科は「学園祭自体に参加したくない。音楽科の催しに「手伝わせてあげる」という上から目線が嫌だ」
と、両科の対立が決定的な事が浮き彫りになってしまいました。ここまで学校自体がギスギスしたのはラブライブシリーズでも初めての事です。
「そういえば葉月恋はスクールアイドルに反対だった!!」と思い出し、話の流れで可可も普通科の生徒達を煽ってしまいます。ラブライブはこの子が中国出身だということを忘れてはいけませんよ!
(民主化のリーダーみたいに見えなくもないですからね)
それはさておき、音楽科はお構いなしに学園祭の準備を進めています。一方で普通科はやはり不満タラタラな様子。ついには恋の陰口まで言い出す生徒も出る始末です。
思ったよりも事態は深刻で、打ちのめされてしまうかのんたち。
千砂都「思ったよりも、複雑になってるね」
すみれ「そりゃそうよ。元々みんな感じていたからね。音楽科と普通科の溝」
すみれはこういう時、皆があまり口に出さない事をケロッと平気で言ってしまいます。そう、このブログでも散々指摘している通り、結衣ヶ丘には音楽科優勢思想のようなものが渦巻いています。ちょっとここでその扱いの違いを纏めてみましょう。
まず、これは第1話の記事でも触れましたが、制服が違います。音楽科の方がどことなく高級感の溢れるデザインをしています。悪く言えば、とっつきにくい、という言い方もできますが……
加えて、全校集会の並び順も音楽科から順番に整列しています。部活動や会社によっては先輩から順に整列したりと、やはり社会的にみても立場の上のものが前に行く、という一定のルールがあります。結衣ヶ丘の音楽科ファーストはここでも確認できました。
(ちょっとわかりずらいですが、前から白い制服を着た音楽科の生徒たちが座っているのがわかります)
そして、おそらく一番大きな違いとして、使用できる施設は圧倒的に音楽科が優れています。普通科は旧校舎と思しき木造の校舎で、少なくとも同好会の部室には冷房設備がありませんでした。
一方で、おそらく音楽科のために新しく建てられた校舎はとても現代的で、空調設備はもちろんのこと、専門の広々とした練習室、更にはエレベーターまでついていました。
(上の画像を見てわかる通り、この練習室は少なくとも生徒8人が伸び伸びとバレエの練習ができるぐらいのゆとりがある)
(葉月恋が出入りしている音楽科の校舎。モダンなデザインの校舎で、廊下にはソファが置かれている。エレベーターまで完備している)
もちろん、これだけ豪華な校舎なのですから、建設費用もトンデモない額になったことでしょう。この環境を用意したと思われる葉月花が亡くなってしまい、父親の後ろ盾も無い恋が経済的に困窮するのも納得がいきます。
こうしてみると、「音楽科を辞めて普通科に転科する」という千砂都の決断は、これだけ恵まれた環境を「捨てた」という事になります。普通科の生徒が、千砂都が転科したと知った時の驚き様も、これを見ればなんとなくわかってもらえるかなぁ、と。
話を元に戻しましょう。さすがにこれだけの混乱と不和を招いてしまい、恋も自身の発言を後悔しているとメンバーに吐露します。
理事長も恋を呼び出し、翌日の全校集会で生徒と話し合うことを指顧します。そして、そこで纏まらなければ今年の学園祭は中止とする旨を恋に告げます。この展開はさすがに恋も予想外だったので、発言を後悔しているわけですね。
「母と同級生だった理事長ですが、やはり私に思うところはあるみたいで……」
これまたサラリと貴重な情報を言う恋。とりあえずここでは重要ではないのでひとまず置いておきましょう。恋が事情を話し、普通科と音楽科で手を取り合うよう呼びかければ丸く収まるのでは、と千砂都が提案しますが、恋は少し思い悩んでこう告げます。
「ただ……スクールアイドルは……」
「スクールアイドルだけは、やめて欲しいのです!!」
⊡ 元祖スクールアイドル 葉月花
今まで頑として学校でのスクールアイドル活動を認めず、ついにはやめて欲しいと懇願までする恋。ついに、その理由を話します。
「かつてここには、学校を廃校から救うために、アイドル活動をする生徒が居ました。それが私の母です」
葉月花が、μ'sやAqoursと同じ動機でスクールアイドルを始めたことが明かされます。(厳密に言うとAqoursは廃校を阻止するために結成されたわけではないですが……細かすぎですかね?)
「まだスクールアイドルという言葉が生まれるずっと前のこと。母たちの活動は評判になり、注目を集めました。でも、目標は叶わず、学校は廃校に……」
この展開はまるっきりAqoursです。前回の記事でも触れましたが、スクールアイドル活動が評判になったからといって、それがイコールその学校に入学したいに繋がらないのです。
(廃校を阻止したμ's。μ'sで学校の注目度が上がったことは事実ですが、はっきりとした因果関係は残念ながらアニメ本編では描かれませんでした)
ラブライブ!のμ'sはいつの間にか廃校が阻止され、それが必ずしも彼女たちのスクールアイドル活動に関係があったという描写はありませんでした。
しかし、事実とは関係なく「μ'sは廃校の危機を救ったスクールアイドル」というラベリングが出来上がってしまいます。
そこからAqoursの、一種の悲劇が始まります。この本当かどうかも怪しい「μ'sの神話」を信じ、Aqours率いる高海千歌はスクールアイドル活動を始めますが、Aqoursの評判とは裏腹に、その人気と翌年の入学希望者の数が比例することはありませんでした。「μ's神話」を信じてしまったばっかりに、「学校を廃校から救う」という目標を達成するために「スクールアイドルをする」という、ある意味間違った手段を取ってしまったともいえます。
(学校の廃校を阻止できなかったAqours。しかし、学校を救うことは出来ました)
とはいえ、サンシャイン!!の場合は、地方の過疎化という、一介の高校生にはそもそもどうすることも出来ない問題が廃校の原因だったので、致し方ない部分はあります。
ここらへんのことは、Love Live! Aftertalk!さんのブログで詳しく書かれているので、是非一読ください。
「だから私は、母が新たに創ったこの学校で、スクールアイドルを始めようと思っていました」
⊡ μ'sの再現
長々と解説した筆者の想いをキッパリと否定するかのように、恋はスクールアイドル活動をするつもりだったと、言います。これにはメンバーも驚き。「スクールアイドル活動をして、学校を盛り上げるつもりだった」と恋は言います。
さて、ここでも触れておきたいのは、恋とμ's穂乃果の類似です。性格も見た目もあまり似ていない二人ですが、共通点は「母親が大好きだった学校が自分も大好きで、廃校を阻止したい」という想いです。あまり記憶に残っている人も少ないかもしれないので記載しておくと、穂乃果が音ノ木坂を廃校から阻止したいと考えたのは「お母さんがこの学校が好きだったから」です。
穂乃果も最初は音ノ木坂の廃校を阻止しようと考えていたわけではありません。そう思うようになったきっかけは、母親がかつて音ノ木坂の生徒だった時のアルバムを見たことです。かつて音ノ木坂に通っていた母親や生徒たち、輝かしい活動の記録などを見て、廃校を阻止しようという想いが芽生えるのです。結構重要なのに、忘れがちなのは、この設定が強調されるのが第1話だけだからですね。
「アルバムを見る」という行動から、廃校阻止へと繋げるこの一連の流れは、まさしく「μ'sの始まりの物語」を再現をしている、ということになります。つまり、神宮音楽学校のスクールアイドル達はμ'sのメタファー的存在として機能しています。
はい、また脱線しました。今回の記事は脱線多めです。
スクールアイドルで学校を救うことを決意した恋ですが、「スクールアイドル活動の記録だけが学校や自宅に残されていなかった」という事実から、「母はスクールアイドル活動を後悔していたのでは? スクールアイドルでは学校を救えないと感じていたのでは?」との疑念を抱くようになりました。
「大切な思い出なら残しているはずだ」と恋は主張します。そうです、大切なものなら残すはずです。平安名すみれがあれだけ嫌がっているグソクムシの動画を携帯に保存しているのも、あれが紛れもなく彼女にとっては「大切な思い出」だからです。
しかし、葉月花はそれを残さなかった。その事実が、恋を縛り付けています。
⊡ 心の鍵
「葉月さんの家で見たあのお母さんの笑顔は、物凄くキラキラしてた。わたし、確かめたい!」
そう言ってかのんたちは、神宮音楽学校の資料を探ることにします。
しかし、スクールアイドル活動の記録だけがみつかりません。当然、恋も学校中の資料を探し回っていたので、そう簡単には見つかりません。
「敢えて処分したとしか……」
思わずそう呟いてしまう恋。すっかり意気消沈してしまっています。何か手掛かりが欲しい可可は「何か言っていなかったのですか」と尋ねます。
「いつも口癖のように、『同じ場所で想いが繋がっていて欲しい』と」
「だからこの場所に学校を創ったのか」と思いを巡らせる千砂都。
しかしかのんは何か別の閃きがあったようです。
「同じ場所で、想いが繋がる……」
何か思い当たる様子のかのんは、全校集会に向かう恋を引き留めて確認します。
「この部屋の鍵って、葉月さんが渡してくれたよね!?」
「理事長が見当たらないというので探したら、私の机から……」
この言葉を聞いたかのんは何かを確信し、走り出します。思い立ったら即行動の力強さがあって良いですね。
走り出した先は同好会の部室であり、かつての「学校アイドル部」の部室でした。
何かがあるはずだと確信したかのん。あたりを探し回り、物置になっている部屋も探し出します。そこには、鍵穴のついた小さな箱がありました。
ふたつあった鍵のひとつを見つめるかのん。
「これ、もしかして!」
これがこの箱を開けるための鍵だと確信したかのん。筆者もこの2つの鍵は第4話の時点から気にはしていましたが、このための伏線だったわけですね。(まぁ、本当言うと、それって屋上の鍵だよね、ぐらいにしか思ってませんでした)
⊡ 想いよひとつになれ
全校集会にて、自身の発言により混乱を招いてしまった事を謝罪する恋。学園祭を通して、この学校の良さを外の人にも知ってもらおうとしたと説明しますが、普通科の生徒の風当たりはなおも強いままです。今までの不満が壇上の恋へと、容赦なく降り注がれます。
「音楽科でなくても歌いたいです!」
「私たちにチャンスは!?」
「音楽科の手伝いだけなんて、酷すぎます!」
「撤回してください!」
黙って耐えていた恋ですが、ある生徒の一言が胸に突き刺さります。
「スクールアイドルもやっぱり活動は禁止なんですか!?」
「この学校で一番結果を出しているのに……」
苦しい表情のまま、恋はなんとか言葉を紡ぎ出します。
「それだけは……」
恐らく、この期に及んでもまだスクールアイドルを否定するつもりだったのでしょう。
この苦しい表情からわかるように、恋は「母親が大好きだった学校を守りたい」という想いを成し遂げるために、「母が行っていたスクールアイドルを否定する」という、矛盾にずっと苦しんでいたのだとわかります。これが、恋の心を縛り付ける、呪いでもあったわけです。
ここでかのんが登場します。「私から話したいことがある」と、理事長の許可も貰って壇上に立ちます。その手には、一冊のノートブックが。
「さっき、スクールアイドル同好会の部室で、このノートを見つけました。この学校が出来る前、ここにあった神宮音楽学校の生徒たちが書いたものです」
「その生徒たちは廃校の危機が訪れた時、アイドル活動で生徒を集めようとしたのです。その時の日誌に、こう書いてあります」
「学校でアイドル活動を続けたけれど、結局学校は無くなることになった。廃校は阻止できなかった」
この事実をかのんが読み上げた時、複雑な表情を見せたのは恋だけではありませんでした。同好会のメンバー、即ち現スクールアイドルたちも、その事実を知ったことでそれぞれ思うところがあるのです。
かのんは続けます。
かのん「でも、私たちは何一つ後悔していない」
恋「えっ?」
「学校がひとつになれたから」
「この活動を通じて、音楽を通じて、皆が結ばれたから」
「最高の学校を創り上げることができたから」
「一緒に努力し、夢を見て、一緒に一喜一憂する。そんなキセキのような時間を送ることが出来たから。だからわたしは、皆と『約束』した」
「『結ぶ』と文字を冠した学校を、必ずここにもう一度創る」
「音楽で結ばれる学校を。ここにもう一度創る」
「それが私の夢。どうしても叶えたい夢」
葉月花の想いは、ただ音楽に力を入れた学校を創るだけではありませんでした。みんなの想いがひとつになり「音楽を通じて、皆が結ばれる」学校を創ることでした。いまの普通科と音楽科で気持ちが分断された結衣ヶ丘とは、全く違う学校です。
「この学校を創った葉月さんのお母さんは、音楽で結ばれることを望んでいたんだよ。この学校は、その夢を叶えるための学校。普通科も音楽科も、心が結ばれている学校」
「スクールアイドルはお母さんにとって、『最高の思い出』だったんだよ」
「最高の……思い出……」
さて、ここで思い出してほしいのはこの記事の冒頭で紹介した「恋が自分の気持ちに釘を刺した」というお話です。恋は当初スクールアイドルで学校を盛り上げようと考えていましたが、母親のスクールアイドルの記録が見つからない事実から「母はスクールアイドルをしたことを後悔していた」と思い込むようになります。その思い込みから、いつしか恋は母が自分に言った大切な言葉までをも封印してしまいます。
しかし事実を知ったことで恋の呪縛が解け、ついに恋は母親の言葉を思い出すことが出来るのです。「最高の思い出」がキーワードとなりました。
「恋、スクールアイドルは」
「お母さんの最高の思い出!!」
完全に呪縛から解放された恋。その瞳からは、大粒の涙が……
ノートと一緒に入っていたのは、かつて母親がスクールアイドルをしていた時の衣装でした。恋は、それを自分の母親にするように抱きしめます。
このシーンは、まさしく恋がスクールアイドルを文字通り受け容れた瞬間でもあり、学校とスクールアイドルとの結びつきを感じ、母親と再会したシーンでもあります。
恋はこうして、呪縛から解放されたのでした。
⊡ Aqoursの再現
さて、ここでどうしても触れておかなければいけないのは、神宮音楽学校が廃校になったという話は浦の星女学院、つまりは「Aqoursの終わりの物語」を再現しているということです。
しつこいようで本当に申し訳ありませんが、Aqoursは学校の廃校を阻止できませんでした。まさに、神宮音楽学校と同じ結末を迎えたわけです。
さきほど筆者は神宮音楽学校のスクールアイドル達はμ'sのメタファー的存在だと書きましたが、それと同時にAqoursのメタファー的な存在だとも言えます。
当時の神宮音楽学校のスクールアイドル達、つまりは葉月花たちがどのような想いだったのかは、Aqoursたちの言葉を聞けばわかるはずです。
千歌「大丈夫。無くならないよ」
「浦の星も、この校舎も。グラウンドも、図書室も、屋上も、部室も。海も、砂浜も、バス停も、太陽も、船も、空も、山も、町も」
「Aqoursも」
「全部全部全部、ここにある! ここに残っている」
「ゼロには、絶対ならないんだよ!」
「私たちの中に残って、ずっと傍にいる。ずっと一緒に歩いていく」
「全部、私たちの一部なんだよ」
「だから!」
「いつも始まりはゼロだった!」
梨子「始まって、一歩一歩前に進んで、積み上げて」
曜「でも、気付くとゼロに戻っていて」
善子「それでも、ひとつひとつ積み上げてきた」
ルビィ「なんとかなるって、きっとなんとかなるって信じて」
花丸「それでも、現実は厳しくて」
鞠莉「一番叶えたい願いは、叶えられず」
果南「また、ゼロに戻ったような気もしたけど」
ダイア「私たちの中には、色んな宝物が生まれていて」
千歌「それは、絶対消えないものだから!」
Aqoursは神宮音楽学校のスクールアイドル達と同じで、学校が廃校になったからといって、決してスクールアイドルをやったことを後悔していません。
もちろん、神宮音楽学校と浦の星女学院の関係性は全くと言っていいほどありませんが、作品的な繋がりから、その精神性が受け継がれていると言っていいでしょう。
そして、このサンシャイン!!のラストで言われたセリフ
「始まりはいつもゼロだった」
このセリフを覚えていてください。
⊡ 「みんなで叶える」 スクールアイドル性
理事長はようやく肩の荷が下りたとでも言わんばかりに、しれっと残った神宮音楽学校スクールアイドルの記録を取り出します。葉月花のアルバムを見てもわかるとおり、理事長もかつては神宮音楽学校の生徒だったのです。
(真ん中が葉月花。その隣にいるのが若かりし頃の理事長。かわいい)
全てを知っていたのにも関わらず、何も言わなかったのは「何も言わず、恋が自分で決めるのを見守っていて欲しい」という約束をしていたからとのこと。
理事長が最低限のサポートや助言しかしなかったのは、この葉月花の約束を守るためだったからなんですね。第2話の記事で色々厳しい事を筆者は言っていましたが、すいません、誤解していました(土下座
それにしても、この学校には校長先生とか教頭先生はいないんでしょうか……? いくらなんでも理事長と生徒会長に色々と任せすぎな気が……。
自分のせいで学園祭の準備が遅れてしまった事を謝罪する恋。そんな恋の気持ちとは違い、既に生徒たちは普通科・音楽科の違いを乗り越えて学園祭の準備をしていました。まさに学校がひとつになり、葉月花が夢見ていた学校の姿がそこにはありました。
「これは……スクールアイドルの……?」
「うん! 『みんなで』作ってる、学園祭ライブのステージ!」
「みんなで……」
この「みんなで」というのが非常に大事です。そもそもラブライブの大きなテーマとしてあるのが「みんなで叶える」というものです。アイドルとスクールアイドルの違いがまさしくここにあります。スクールアイドルが実現するものは「みんなで叶える」という一種の共同体意識(ここでは学校というコミュニティ)の下で実現しています。これは、物語としてのラブライブも、我々の世界でのラブライブも同じです。それこそが「ただのアイドル」にはない、「スクールアイドル性」とも言える物です。
そして、恋は学校を守るために奔走しますが、「自分が頑張らなければいけない」と、学校の生徒達を頼ることをしませんでした。まさしく、恋は「スクールアイドル性」を失っていたのです。そんな状態で頑張っていても、この世界で、恐らく現実世界でも、叶うものも叶わなくなってしまうことでしょう。
そして恋は失った「スクールアイドル性」を取り戻します。
⊡ スーパースター!
「葉月さん、ううん、恋ちゃん。一緒にスクールアイドル、始めませんか!」
今までかのんたちの邪魔ばかりしていた自分にそんな資格があるのか、と恋は悩みます。そんな恋に、かのんはこう言います。
「私、恋ちゃんとスクールアイドルとして歌いたい。この学校の為に、いや、この場所でつくられた、たくさんの想いのために!」
かのんは現在の結衣ヶ丘の為ではなく、廃校になってしまった神宮音楽学校の生徒たちや、葉月花の想いも引き継いでスクールアイドルをすると宣言しています。それは、恋にとってはこれ以上ない殺し文句ですが、恋は未だためらっています。
そんな時、強い風が吹き、恋の背中を押します。
この風の意味は……解説するまでもないですね。
こうして、恋はかのんの手を取り、スクールアイドルになりました。
恋も新しく同好会に加わったことで、メンバーたちの士気もあがります。普通科も音楽科も手を取り、学園祭の準備を進め、結衣ヶ丘はかつてないほど順調な雰囲気に包まれています。しかし、生徒会長である恋はやはりひとつの不安をぬぐうことが出来ませんでした。それは、来年の入学希望者の数です。
「入学希望者……増えるでしょうか……?」
そう、神宮音楽学校のスクールアイドルたちは、結局学校の廃校を阻止できませんでした。万事うまくいっているように見えますが、果たして昔と同じやり方、つまりはスクールアイドルで学校を救えるかどうかわからないのです。
しかし、それでも、かのんはめげません。「正直わからないけど、やるしかない。信じるしかない」と、前に進むことだけは止めようとしません。そして、かのんがとても気になるセリフを言います。
「ただね、わたし、『始まりの瞬間』が好きなの」
そう、かのんが何気なく言ったセリフですが、結衣ヶ丘女子高等学校とLiellaの物語は、ここが「始まり」であり、「ゼロ」なわけです。つまり、かのんたちは神宮音楽学校のスクールアイドル達(Aqours)の想いを引き継ぎ、「終わりの物語」をまた「ゼロ」に戻して「始まりの物語」をスタートさせたのです。
ここにきて、かのんのリーダーシップがより一層輝きだしました。
5人になったメンバーたち。ついにLiellaが揃ったのです。
彼女たちは、神宮音楽学校の生徒達の過去を引き継いでいます。
「μ'sの始まりの物語」と「Aqoursの終わりの物語」を受け継ぐ彼女たちは、まさしく「スーパースター」と呼べる存在です。
⊡ タイトル「結ばれる想い」とは
このあとの「Wish Song」の考察までしてしまうと、さすがに長くなりすぎるので最後にタイトルの妄想考察だけして〆ます。
スーパースター!!だけを見ると、このタイトルの意味は勿論「『神宮音楽学校』と『結衣ヶ丘』の想いが結ばれた」ということになるのですが、今回の記事の考察に沿って考えると、それだけではなくμ'sやAqoursが紡いできた想いが、時空を超えて結ばれた、という風に捉えられます。
過去作を知っているラブライバーからすると、ラブライブの歴史までもが見えてくるようで、やはり胸が熱くなる回でした。ここまで計算してやっているのだとすると流石としかいいようがありません。筆者も書いていて、胸にこみあげるものがありました。
まだ第8話でこの盛り上がりよう。いったいこれからどうなってしまうのか、とても楽しみですね。
それでは今回はこの辺で。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!!
次回、第9話「君たちの名は?」でお会いしましょう!
さようなら!