スクールアイドル研究所

ラブライブシリーズのアニメ考察がメインです。考察という名の妄想ですが……

ラブライブ!スーパースター!! 考察 第12話「Song for All」はじまれ!~新しい「私」——。「私を叶える物語」とは~

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さて、いよいよスパスタも最終回となり、感慨深いものがあります。

 

今回で最終回なので色々と言いたいことはありますが、この記事はあくまで考察です。私の個人的な感想は、極力控えていくスタイルは今までとあまり変わりません。

 

個人的な感想や総評は後日、別記事にて語らせて頂きます

 

第12話は記事のタイトルにもある通り、ずばりかのんが「新しい『私』」を始める瞬間が描かれた回でした。

「私を叶える物語」とは一体何なのか? そして、スパスタ第1期のポスターにあった「はじまれ!新しい『私』——。」は、いったいどういう意味なのか?

 

今回は、その意味を筆者なりに「完全解説」したいと思います。

 

前置きはこのぐらいにしておきましょう。

それでは、最終回なので張り切っていきましょう!!

 

※ここから先はラブライブ!スーパースター!!第12話のネタバレを含みます。まだ本編を視聴していない、またはネタバレが嫌だという人は決して見てはいけません。マジで責任は取りませんので、悪しからず。

※基本的にこの考察はただのおっさんの妄想です。ひとりのラブライバーの解釈であり、これが「正解」であるなどと言うつもりは全くございません。あくまで、妄想・ジョークの類として受け取って頂ければ幸いです。

 

 

 

⊡ 成長が見えるLiella!

冒頭練習に励むLiellaの面々。特にかのんは気合がかなり入っており、追加で練習しようと提案しています。

 

ここらへんの多少(というかかなり)オーバーワークとも言える熱の入れ方は、やはりどうしても無印ラブライブ!での穂乃果を彷彿とさせます。

 

無印では穂乃果がオーバーワークを重ねてしまった結果ライブで倒れてしまい、ラブライブにエントリーすることも出来なくなるという最悪の結果を招いてしまいました。筆者の考察としては何があそこまで穂乃果を駆り立てたのか、非常に考察のしがいがある、ラブライブを語るうえで深い回でしたが、それはまた別の機会に取っておきましょう。

 

すみれ「あなた、力みすぎじゃない?」

かのん「だって東京大会が近いんだよ!?」

 

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そんなかのんの状態を心配してか、すみれがそう声を掛けますが、当の本人は燃え盛る情熱を抑えることが出来ない様子。

情熱で思い出しましたが、かのんはスペイン人とのクォーターという設定があります。スペインと言えば「情熱の国」として知られていますが、こういった設定も「かのんは元々熱い性格だった」というストーリーラインを見越してのことかもしれません。まぁ、アニメ上で(少なくとも第1期までは)その設定が語られることはありませんでしたが……。

と、かのんの体に流れる血は置いといて、ここまでかのんが燃え上がっている理由は東京大会が近いというのも勿論あるのですが、第11話でかのんが過去の自分との対話を終えて「かつての自分」を取り戻したからに他なりません

視聴者はなんとなく第1話の印象が強いので、かのんがやさぐれガールだと思い込んでしまいますが、こっちが本来の姿というわけですね。

やさぐれかのんが好きな方は、もうあのかのんを見ることは余程の事が無い限り出来ないと思いますので、コミケで頑張ってそういう薄い本を探してください。

 

かのん「なんか、頑張った分だけ出来るようになっていくのって、楽しいなって思って」

 

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そう言われて、すみれもこの表情です。この笑顔に実を言うとすみれの成長が表現されています。

第10話「チェケラッ!!」ですみれの練習シーンがありましたが、あれはすみれが「隠れたところでキッチリと努力をしている」というシーンでもあったわけです。

 

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その逆にと言っては何ですが、第6話でのサニパでの合同練習の時は、ヘアメイクを理由に30分ほど練習に遅れると言っていましたが、あれはその逆で「人前であまり頑張るところを見せたくない」というシーンにも捉えられます。

 

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しかし、今回かのんが「頑張った分だけ出来るようになるのが楽しい」というセリフに笑顔を見せているあたり、すみれも同じ気持ちなのだと察します。つまり、すみれも今は隠れて一人で努力をするのではなく、仲間と一緒に練習して成長するのが楽しいのですそこにはかつてかのんたちを「アマチュア」と見下していたすみれはいません。

恐らく、1秒にも満たないカットですが、すみれの心境の変化の機微を捉えられていて良いシーンだなぁと思いました。

 

恋「かのんさん、以前よりだいぶ変わりましたね? 前向きになったというか……」

千砂都「そんなことないよ」

恋「え?」

千砂都「これがかのんちゃん、私が知ってる」

 

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幼馴染マウントに余念がないちぃちゃん。

幼馴染の千砂都は当然かのんが以前より熱い性格だったことを知っています。千砂都にとってはこちらのかのんの方が馴染みがあるというわけですね。

 

さて、この何気ない千砂都のカットも考察ポイントです。千砂都にとっての「私が知ってるかのんちゃん」というのは、もちろん幼少期の頃のかのんを指しています。そう言いながら何気なく目線と手をやっているのは、決まって右のシニヨン(お団子)です

第6話の回想で千砂都がイジメられている時、髪留めを奪われ千砂都は右だけ髪留めなしの状態でしたが、かのんが助けに来て髪留めを取り返し、右のシニヨンを作ることが出来ました

 

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「かのんが髪留めを取り戻してあげた」という構図にばかり注目しがちなので、どうしても髪留めにばかり意識が言ってしまいますが、実は千砂都は昔のかのんを思い出す時には目線(意識)が右に行っています。何故かというと、かのんが取り戻した髪留めは千砂都にとって「右のシニヨン専用」になっていて、右の髪留め(シニヨン)がかのんとの思い出のモチーフになっているからです

 

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(第6話、練習時の千砂都。このカットの直前には髪留めだけのカットがありました。髪留めのカットを入れ、わざわざ右のシニヨンだけ無い状態だったのは、昔のかのんを思い出して回想に浸っていたから)

今更こんな考察は野暮かもしれませんが、第2期がありましたら千砂都の目線にも注目して観ていきましょう。

 

789のひとり、やえが理事長が恋を呼んでいると知らせてくれます。

どうやら恋ちゃんがまたパソコンでエッチなサイトを観ていたらしく、今度こそ理事長からお𠮟りを受けてしまう……

わけではもちろんありません。何かの知らせを受け取り喜ぶ恋。そして、父親から必要なお金を学校に寄付したいとの申し出があったと理事長から知らされます。

 

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(いちいち可愛いれんちゃん)

⊡ デウスエクスマキナ

 

かのん「入学希望者が増えた!?」

恋「はい! 今の数ならば、生徒が足りなくなることは無い、と。来年以降も結衣ヶ丘は続いていきます」

 

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と、μ'sのようにホイホイッと廃校問題を解決してしまったLiella!。これに関して言いたいことが結構ありますが、後日の総評にて後回しにさせて頂きます。

 

すみれ「私のラップが人々の心を掴んだのね」

 

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と鼻高々なすみれ。例のごとく可可が「自惚れルナ」と窘めますが、実際のところ前回のライブからLiellaは評判になり、フォロワー数も増えたとのこと。

 

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フォロワー数と言って思い出すのは第4話「街角ギャラクシー☆彡」にてすみれが自身のフォロワー数を気にしていた時のこと。

 

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その時のすみれ個人のフォロワーは口に出すのも恥ずかしい散々なものでした。しかし、Liellaの一員となることで自身のアカウントではないものの、憧れだった大量のフォロワーを獲得することが出来ました。こういったところにちゃんとすみれの救済というか、努力が報われたところが描かれていました。この作品を通してすみれが凄く好きになった筆者としてはこれは非常に嬉しい所でした。

 

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(にんまり。守りたい、その笑顔)

 

⊡ 高い壁サニーパッション

 

東京大会の詳細もついに発表になりました。日程は日本の独身男性達を絶望に陥れる恐怖の日、12月25日のクリスマスまさに天王山に相応しい日程となりました

 

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更に今回はリモートでそれぞれの学校ゆかりの場所からライブを生中継するという形式になるとのこと。更に更に、自分たちのステージを自分たちで用意しなければならないという、中々に難しい課題も付いてきています

 

神宮競技場や外苑球場など、言葉を選ばずに言うなれば身の程知らずな場所を候補として挙げていくすみれと千砂都。どう考えても現実的ではありませんが、行動力の鬼である可可は翌日に聞いてみると、やる気満々です。

 

可可「今回は東京大会ッ!どの地区もとっておきの場所を用意するはずです。地味なステージではLiella!は埋もれてしまいます!」

 

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アニメで言うところのガチライバーな可可は、そこのところの分析も流石でした。今回は自分たちでステージで用意をするということは、ステージの見た目も当然評価の対象になるのです。可可はステージの重要さをいち早くに察し、手を抜くことがないようメンバーにも発破をかけているわけですね。

 

⊡ 戻りつつあるかのん

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かのんが家に帰ると、家族が地区予選を突破したことを聞き、クラッカーでお祝いをしてくれています。かのんは特に何も知らせていなかったようですが、身内にまでその一報が出回ってるところを見ると、やはりLiella!が少なくとも原宿近辺で評判になっているのは間違いないようです

 

ありあ「最近、私の中学校でも話題になってるよ!」

ママ「この前ひとりで歌ったんでしょ? すごいじゃない!」

 

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かのん「ありがとう……」

 

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こういった何気ない家族のやりとりにも、かのんの成長が伺えます。第1話でやさぐれていたかのんは、家族に素っ気ない態度を取ります。それはもちろん音楽科への受験に失敗したことへのショックで、家族の優しさも素直に受け取れなかったからですが、今のかのんはそういった過去のコンプレックスを全て払拭した状態です。千砂都ではありませんが、この家族への対応が元々のかのんなのでしょうね。

 

⊡ 既に勝敗は決していた

 

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決勝のステージは体育館にするつもりだと何気なく話すと、789が「本気で勝つ気があるの!?」と怒られてしまう始末。ちなみにちょっとした考察というか見解としては、ラブライブシリーズの数字モブはメンバー以外の生徒の意見を代弁した存在として扱われていますね。つまり、789がステージに関して「欲が無さすぎる!」と言ったのであれば、それは「結衣ヶ丘のLiella!を応援している生徒の殆どがそう思っている」と考えて恐らく間違いないと思います。

 

何気なくモブの考察を進めていますが、このかのんのステージに対する「欲の無さ」が、実を言うと大きな伏線になっています

 

すみれ「だから言ったのよ、地味すぎだって」

かのん「でもみんな冬休みだし、外だと色々大変だと思って」

すみれ「あんたは気を遣い過ぎなのよ。もはやLiella!はこの学校の代表よ。ワガママ言うくらいでいいんじゃないの?」

 

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後にわかりますが、このすみれの指摘は非常に正しいものになりました。つまりかのんには「結衣ヶ丘の代表」という意識がまだありません。

かのんも1話から見ると大きな成長を遂げたのは、既にこの記事でも取り上げた通りです。しかし、かのんにはまだ「遠慮」があります。「遠慮」ぐらいで済めばいいのですが、かのんはこんなことを呟いてしまいます

 

かのん「わたしは本当は、歌えるだけで……」

 

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この後に続くのは、もちろん「歌えるだけで(良いのに)」というような感じのセリフだと思います。先に言っておくと、もうこの時点で実を言うとLiella!の勝敗は実質決まっていました。

つまり今のかのんは「歌うだけで満足」であり、「勝ちたい」という欲がありません。それが先ほど789に指摘されたステージに対する「欲の無さ」だったり、すみれに指摘された「遠慮」であったりに繋がっています。

そして何より大事なのは、スクールアイドルやラブライブは「競技」です。歌うだけで満足だというのであれば、少なくともラブライブで戦っていけるスクールアイドルとは言えません。

つまり、かのんのこの「勝負や勝利への無頓着さ」が、Liella!の敗北をこの時点で決めてしまっていたのです。

 

そして、そんなかのんの対比として描かれている人物が3人います。ひとりは唐可可です。

 

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可可は第10話で明らかになったように、負ければ帰国するという背水の陣です(正確には「結果が出なければ」でしたので、今回の負けはセーフだったようですが……)。それだけではなく、可可は実を言うと根っからのスクールアイドルとして劇中描かれていますラブライブやスクールアイドルが「競技、勝負の場である」という本質を見抜いているので、上記画像のようにボロボロになってまでステージを探しています。ステージの重要性にピンと来ず、行動しないかのんとは真逆です

 

可可「ありとあらゆるライブ施設をあたりましたが、スクールアイドルには不向きだろうと皆さん申し訳なさそうニ……」

 

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かのん「確かにこの周辺は、元々スクールアイドルに馴染みは薄いし……」

すみれ「でも、そろそろ決めないと……」

かのん「うん、家に帰って一晩考えて見るよ」

 

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と、このセリフひとつとってみても、即決速攻の可可とは違うことが伺えます。厳しい事を言ってしまうと、呑気だとも見えます。

その呑気さに釘をさすかのように、かのんの家で待ち構えていた人物がいます。そう、サニーパッションですサニーパッションこそが、第12話において、一番かのんと真逆の存在として描かれています

 

悠奈「でも、勝つのは私たちだよ!」

摩央「キミたちに、負けるつもりはない」

 

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そう言われたかのんは、躊躇いがちに「私たちも負けません」と宣言しますが、その後にこう付け加えてしまいます。

 

かのん「すみません!偉そうに言ってしまって!」

 

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と、これから勝負する相手にすら「遠慮」してしまっています。これでは勝てるものも勝てません。

このように、かのんはとことん「勝負」の本質というものを理解していません。そして、ついついかのんは素直な気持ちをサニパに吐露してしまいます。

 

⊡ マイナスからゼロへ

 

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かのんは「歌で勝ったり負けたりする」ということにあまりピンと来ていないと、サニパに素直な気持ちを打ち明けます。競技としてのラブライブを根底から覆しそうな発言ですね。

 

ここからのサニパとの会話はかなり重要です。

 

かのん「良い歌を歌いたいって気持ちはあるんです。みんなと沢山練習して、最高のライブを目指したい」

「でもわたし、ずっと歌えないかもっていう不安があったから、自由に表現できるだけでもう、本当はそれだけで幸せで……」

 

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かのんの立場を考えて見ると、これは結構納得できます。かのんは歴代のラブライブ主人公の中でも、「歌が歌えない」というスクールアイドルとしてはマイナスからのスタートでした。そのマイナスをようやくゼロにしたばかりで、勝負にまで気が回らないといのもあるかと思いますが、「元々のかのん」は「勝負」に対してそこまで関心が無いということでもあります

 

摩央「なるほどね」

悠奈「君の言うことはわかるよ。歌は競うものじゃないかもしれない。自分ひとりでも楽しめるしね!」

 

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優しい言葉を掛ける悠奈。第6話でもスクールアイドルを続ける意味を悠奈に相談した時に「歌が好きだからという理由だけでも良い」とかのんを励ましていました。自分と熱量が合わないからという理由だけで、相手を下に見ない悠奈の人間性が見えます。

 

かのん「ですよね!」

悠奈「だとしても、競い合うことで、より高め合うことが出来る。実際、ラブライブが行われることによって、スクールアイドルのレベルは格段に上がったと言われてるんだ」

 

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しかし、ここでは悠奈はかのんの気持ちに対して「同意は出来るが賛成は出来ない」ということを、やんわりと伝えています。

何故ならサニパは「ただ歌うだけでは満足できない」「より高みを目指していきたい」と思っているからに他なりません

しかし、かのんにはその気持ちがまだわかりません。すると、摩央はこんなことを言います。

 

かのん「そう……ですか……」

悠奈「納得いかない?」

かのん「いえ……。まだ、そこまで気持ちが……」

摩央「大丈夫。ラブライブで歌えば、すぐ気付くはずよ。なぜみんな勝ちたいか。いや、勝たなきゃって思うのか」

 

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⊡ 第1話との比較

 

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サニパとの帰り道、原宿に煌めくイルミネーションからステージへの着想を得たかのん。翌日メンバーに自分のアイデアを話します。ラブライブ!「スーパースター!!」とあるだけに、やはりというかモチーフは星になりました。

 

東京大会まで日にちの余裕がありません。すぐにステージの準備に取り掛からなければいけないとなった時、789の3人が現れ、ステージの準備は任せて欲しいと意気込みます。

 

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ここの「準備に忙しくてちゃんと歌えなかったりしたら、私たちが後悔するの」

ななみ「私たち1年生だけだからさ、他の部活が大会に出たとしても、すぐ負けちゃうんだよね」

ここの「その中でかのんちゃん達は、ここまで頑張ってる」

「かのんちゃん達は、この学校の希望なんだよ。だから、応援させてほしいの!」

 

しつこいかもしれませんが、ラブライブシリーズに於いて数字モブキャラ(神モブとも言うそうですが)は、主人公たち以外の生徒の声を代弁する存在です。ななみが言ったように今作では今のところ1年生しかいませんので、より纏まったいけんの代弁者になっているような気がします(あくまで気がするだけ)。

 

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東京大会当日。朝目が覚めてからのかのんは、何かと第1話の「やさぐれかのん」と非常に対照的に描かれています。ひとつずつ見ていきましょう。

 

まず第1話でやさぐれかのんは、妹に「遅刻するぞ」と怒られてしまうぐらいギリギリまで寝ていました(というよりかはただ単にゴロゴロしてただけでしたが)。

 

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しかし、第12話でのかのんは「まだ全然眠れる……」という寝たい気持ちを抑え、「ダメ!起きよう!」と自分を奮い立たせるように起床します

 

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起床したかのんは母親に"自分から"「おはよう」と挨拶をしています。

ところが、第1話では母親に「おはようは!?」と半ば叱られるように言われ、ようやく「おはよう」と小さく呟いています。これも、非常に対照的ですね。

 

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そして、更にもう一つ。第一話で母親が「朝ごはん、いいの?」と聞いても、かのんは「うん」と頷くだけで朝ご飯を食べようとしませんでした。

「家族と一緒にご飯を食べる」や「家族が作ったご飯を食べる」というのは、映画の世界で「家族とのコミュニケーション」や「家族の愛」を描く手法として使われることが多いですが、まさにこの時のかのんは家族とのコミュニケーションを遮断し、母親の愛を素直に受け取れない状態だったと言えます

 

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12話を観て見ましょう。かのんは自分から「朝ごはん、学校に持ってってもいい?」と母親に聞いています。それを聞いて母親は「もちろん!」と笑顔を見せます。やはり自分の料理を自分の子供が食べてくれるというのは非常に嬉しいですね。安直かもしれませんが、料理が「愛情」だとすると、かのんはようやく母親の愛情を素直に受け取れるようになった、ということになります

 

そして極めつけはもちろんヘッドホンです。第1話でかのんはヘッドホンのノイズキャンセリングで、周りの音をシャットダウンしていました。

 

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この作品に於いて、「人との繋がり」がいかに重要なのかは今更語る必要もないと思いますが、このヘッドホンをしたかのんはまさに自分の殻にこもり、人との繋がりを持とうとしない少女として描かれていました。第3話での筆者の考察が正しいと仮定すると、それこそがかのんが人前で歌えない原因のひとつだったわけですが……。

 

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しかし、もちろん皆さんご存じのように、かのんはそういった問題を既に克服しています。妹から忘れものだと差し出されたヘッドホンに、かのんはこう応えます。

 

かのん「もう大丈夫!」

 

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と、ここまで見てわかるように、この澁谷家のやり取りだけで、かのんがどれだけ大きく成長したかがわかるようになっています。ヘッドホンはかなり解りやすかったと思いますが、細かなところまで第1話と対比してかのんの成長が描かれているのは、スタッフの気配りがなせる業でしょう。

 

⊡ Snow Halation

 

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ステージの準備を手伝おうと体育館に向かうLiella!ですが、体育館はもぬけの殻でステージは姿も形もありません。

 

「あんまりなんじゃない?怒」

 

と、かのん役の伊達さゆりさんの演技が無駄に迫真なので、ここのかのんちゃんはめちゃくちゃ怖いですが、もちろんステージは別の場所に用意されています。

 

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この先を進んでいけばステージだと、生徒たちが花道(と言ったらなんか引退するみたいですね。語彙力が無くてすいません)をLiella!に作ってくれています。

わざわざこういうシーンを入れているのは2つ理由があると考えます。ひとつはもちろん、学校がひとつになってLiella!を応援しているんだという、「学校の一体感」をここで改めて強調しているわけです。ちょっと前まで結衣ヶ丘は音楽科と普通科でバラバラでしたからね。

 

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もうひとつは、皆さん何となくお気づきの通り、無印ラブライブ!2期第9話「心のメロディ」のセルフオマージュをやっているのです。この後に出るステージも、なんとなくμ'sの「Snow Halation」を彷彿とさせるものです。

あと、これはTwitterで拾った情報ですが、この上のカットで「足元きをつけて」と生徒が言っているセリフは、「心のメロディ」でことほのうみが会場に向かう際に同じセリフがあったとのこと

筆者も確認しましたが、本当に同じセリフがありました。ということで、これは結構意図的に「心のメロディ」のセルフオマージュをスタッフがやっているとわかります。スタッフもラブライブのファンなんだなぁ、ってことでしょうか。

 

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先ほどこのステージをμ'sの「Snow Halation」を彷彿とさせると書きましたが、筆者的にはSaint Aqours Snowの「Awaken The Power」も入ってるんじゃないかなぁと思いました。

 

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こうやって見ると、奥に坂を配置している構図だとか、要素要素を見ていくと似ているところがあると個人的には思っています。え? 似てない? すいませんねぇ……

 

で、話を戻しますと、こんな盛大なステージをどうやって作ったのかというと、街の人も協力して作ってくれたとのこと

もう明らかにプロの仕業だろという野暮なツッコミは無しにして、ここで大事なのはLiella!は学校だけでなく、原宿という地域までもが応援する、いわば原宿代表のスクールアイドルにまで成長したということです

学校だけでなく、地域までを巻き込み、「背負うものが大きくなった」という事実が、かのんの「スクールアイドル覚醒」への大きな要素となっていきます

 

⊡ 「私を叶える物語」とは

 

パフォーマンスをする前に、かのんがLiella!の代表として軽い挨拶を行います。ここでのかのんの言葉も、第1話とは対照的な言葉になっています。

 

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かのん「このステージに立って、この景色を見て、私は胸を張って言えます! 結衣ヶ丘の生徒になれて良かったって! この学校が一番だって!」

 

ちょっとしたポイントですが、このセリフの後、恋が目を潤ませて感動しているのがわかります。こういう細かい演技も、最終回ならではですね。

セリフに注目してみると、やはりこれも第1話のかのんと対照的になっています。1話でかのんは受験失敗のコンプレックスから、普通科の制服を恥じたり、人目を避けるように通学していました。しかし、今では胸を張って、「結衣ヶ丘の生徒になれて良かった」と言っています

 

さてさて、散々私はこの記事で「かのんは成長した」という風に言っていますが、これに関しては千砂都の意見の方が正しいです。つまり、かのんは「成長した」というよりは、「元に戻ることが出来た」と言う方が正確だと思います

もう少し詳しく説明すると、前述したようにかのんは物語序盤、「歌が歌えない」というマイナスのスタートでした。では、ゼロがどのような状態なのかというと、当然「歌が歌える」というのがゼロなので、歌に関してかのんはゼロに戻ることが出来ました

さらに、このライブ前の挨拶に関してもそうです。かのんは元々「結衣ヶ丘に憧れていた」女の子でしたが、それが受験の失敗からいつの間にか「結衣ヶ丘(普通科)に行きたくない」という、マイナスの状態になっていました。これもゼロに戻ったので、「結衣ヶ丘の生徒になれて良かった」とここで言っているわけです

 

スパスタ第1話から12話まで、かのんがマイナスをゼロに戻す、すなわち「本来の自分に戻る」までを描いた話になっていました

そう考えると、「私を叶える物語」という言葉の意味も理解できます

 

かのんはずっと「本来の自分=私」に戻ることを「叶えたかった」ということです。つまり「私を叶える物語」とは、「マイナスの自分」を「ゼロの自分(本来の自分)」に戻すことを叶える物語だった、というわけです。

1話と12話が何かと対照的に描かれている理由は、まさにこれです。12話のかのんは、まさしく「本来の自分」であり、「私を叶えた」状態になっています。これこそが、「私を叶える物語」の意味だったのです。

 

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かのんは「私を叶えた」ことで、第1期の物語としては完結したと言っていいでしょう。しかし、「私に戻る」だけではダメでしたそこで、更に「新しい『私』」を始めるのが、第12話です。

 

⊡ はじまれ!新しい「私」——。

 

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この後に披露される「Starlight Prologue」ですが、筆者は歌詞よりもそのタイトルに注目してみました決して歌詞を考察するのが面倒だったからではないです。

 

Prologue(プロローグ)とタイトルにもある通り、これは「序章」であると、もう公式さんからのメッセージが出ています。つまり、今までの話も「序章」であり、「Liella!のお話はまだまだこれからなんだよ」ということをスタッフは言ってるわけですね。

第12話が終わって、Twitter上ではなんとなく「物足りない」という意見もチラホラ見ましたが、それもそのはず。だってこれはまだ「序章」なんだから。これからが本番ですよってことですかね。

 

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さて、前述したようにLiella!は健闘虚しく、1位のサニーパッションに届かず敗れてしまいます。敗れた理由に関しては、これまた前述したとおりです。

 

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今回の敗北は、クーカーの時とは違います。クーカーは「理事長の約束通り1位になれなかった」という点では敗北と言えるのですが、あの時はそれでも特別新人賞を受賞していました

しかし、今回の敗北では何も残りませんでした。「がんばったで賞」的な、慰めの賞すらもらえない、まさに完全な敗北です

 

かのん「ダメだった。ごめん……」

ななみ「ううん、ありがとう。最高のステージだったよ」

ここの「わたし、凄く誇らしくて、感動した! ごめんね、勝たせてあげられなくて……」

 

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応援してくれた人たちの慰めの言葉も、敗者のLiella!には刃の様に心に突き刺さっていきます。

 

モブ子「みんな……すぐ、片付けないと……」

ななみ「あ、そっか」

ここの「街の人にも、お礼言わないと」

 

そして、何気なくここのが言ったセリフで、Liella!は「街の人も応援してくれていた」という事実を嫌でも思い出します。それらの事実で、「敗北」の2文字がさらに重く5人にのしかかります。

 

ここから、かのんのスクールアイドルとしての覚醒が始まります。それは、「新しい『私』」の始まりでもあります。

 

かのん「そっか、こういうことなんだ……」

千砂都「かのんちゃん?」

かのん「ちぃちゃん、わたし、悔しい……」

 

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かのん「せっかくみんなが協力してくれたのに、何もお返しできなかった!」

「みんなが協力してくれたのに、何も返せずおしまいになっちゃった!!」

可可「かのん……」

すみれ「また、全力で挑みましょう」

恋「そうです」

 

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かのん「勝ちたい……わたし、勝ちたい!!」

「勝って、ここにいる皆を笑顔にしたい! 『やった!』ってみんなで喜びたい! 私たちの歌で、Liella!の歌で、結衣ヶ丘の歌で優勝したい! いや……」

「優勝しよう!!」

 

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ここが筆者が考える、かのんが「新しい『私』」を始めた瞬間です。どういうことか、説明します。

元々のかのん、というよりは、「私を叶えたかのん」は、「勝負」に対して無頓着でした。それは、中盤でのサニーパッションとの会話から読み取ることが出来ます。

しかし、今回敗北を経験したことで、かのんには「勝負の意識」が芽生えました。「学校のみんなの努力を無駄にして悔しい」「せっかく街の人も応援してくれたのに」。それらの想いがかのんに宿り、新たなスクールアイドルとして覚醒しました

 

かのんは恐らく、今非常にサニーパッションに近いスクールアイドルになっているでしょう。中盤で悠奈は決して「私を叶えたかのん」を、スクールアイドルとして否定はしませんでした。しかし、自分たちは優勝を目指すために高みを目指す、「かのんとは違うスクールアイドル」であることを暗に言っていました

 

今まさに、かのんは「高みを目指すスクールアイドル」として覚醒しました。

これこそが、第1期のポスターに書かれていた「はじまれ!新しい『私』——。」の意味であり、「新しい私」になったかのんは、「高みを目指すスクールアイドル」として覚醒しました。

 

そして、「新しい私」が目指すものはもちろん……

 

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以上、ここまでがPrologue、つまり「序章」です。

そして、序章がここに完結しました。

 

⊡ おわりに

 

以上で、私(Jむす)のスパスタ第1期の考察が終わりました。

かなり拙い文章で、読みにくい、解りにくいところ多々あったと思います。

 

しかし、こんな私の文章でも読んでくれる人がいて、共感してくれる人がいるのだと知り、胸がいっぱいになりました。

 

なにより、少しでもラブライブシリーズや、スパスタの魅力をお届けできたのなら幸いです。

 

冒頭でもお伝えした通り、まとめや総評は後日別記事にてお届けします。最後に書くことではないかもしれませんが、筆者は基本的にスパスタは非常に楽しめましたし、すぐれた作品だと思っていますが、不満点が無いわけではありません。最後に、そこらへんを詳しく語れたらと思います。

 

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!

それでは次回、「ラブライブ!The School Idol Movie!! 考察」でお会いしましょう!!

 

さようなら!! ギャラクシー!!

 

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