アニメ虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 第1話 今更考察 ~ボケっとしてたらわからない重要な回~
皆さんこんにちは私です。
今回から少しずつですが、ニジガクアニメ(以下アニガサキ)の考察を進めてまいります。理由は第2期が来年の4月に放送される予定だからというのと、私としても今一度このアニメに真剣に向き合ってみたいと思ったからです。
前回では大枠を捉える意味で、アニガサキの世界観を考察しました。
それが合っているのかどうかはさておき、以降の記事は基本的にその考察をベースに進めていきます。まだ読んでいない方は是非読んでみてください。
さて皆さん、アニガサキ第1話を観て「良い!」とか思った方は大勢いらっしゃると思います。しかし、具体的に何がどう良いのかを説明できる方はあまりいないかと思います。
さらにはアニガサキを観て、なんだかよくわからない、いわゆる「ふわっとした」というような感覚を覚えた方もいるでしょう。私もそうでした。
それもそのはずです。今までのラブライブシリーズでは「廃校を阻止する!」「輝きたい!」や「歌えるようになりたい!」などのわかりやすい目標が、第1話の時点で提示されていました。
ではアニガサキ第1話にそれが無いのかというと、そうではありません。ただそれが非常にわかりにくいし、なによりわからなくても十分面白いので気にならないのです。しかし、それがなんとなくわからないから「ふわっとした」感覚だったり、果てには「つまらない」といった印象を抱いてしまう方も、一部出てきてしまうことは事実です。
そこで今回の記事では第1話を紐解き、ニジガクの魅力をより多くの方に届けることを目標にします。この記事を読めば、「ふわっとした」感覚がなくなり、第1話及び、その後のアニガサキの見方がバッチリわかるようになります(たぶん)。
※ここから先はラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の第一話ネタバレを含みます。まだ本編を視聴していない、またはネタバレが嫌だという人は決して見てはいけません。マジで責任は取りませんので、悪しからず。
※基本的にこの考察はただのおっさんの妄想です。ひとりのラブライバーの解釈であり、これが「正解」であるなどと言うつもりは全くございません。あくまで、妄想・ジョークの類として受け取って頂ければ幸いです。
- ⊡ 非常に重要だった第1話
- ⊡ 変わり始める「日常」
- ⊡ 「日常」を変えたスクールアイドル・優木せつ菜
- ⊡ 変わった「日常」が戻る恐怖
- ⊡ 新しい自分 スクールアイドルとしての「明日」
- ⊡ 2人で成長していく物語
- ⊡ まとめ
⊡ 非常に重要だった第1話
さて、いきなりですが初回は非常に重要です。前述したようにアニメやドラマの第1話では、これから始まる物語の目的やテーマなどの提示が視聴者に行われます。それは何もラブライブに始まったことではありません。
そして、特にこのアニガサキの第1話はかなり重要です。何度も言いますが重要なんです。
というのも、はっきり言ってしまうとアニガサキは第1話や第3話、ラストの11,12,13話が重要で、それ以外はそれらのエピソードを補完するためのモノだからです。
もちろん、熱心なファンの反論が今にも聞こえてきそうなのもわかりますが、筆者としては第1話で描かれている3人のキャラクターが中心だと考えています。
それ以外の魅力的なキャラクターはその3人の人間関係や悩みを「〇〇の場合~」といった具合に、簡易的に1話で提示されたテーマを再現する役割を、このアニメでは担っていると考えているからです。
3人のキャラクターとは、もちろん高咲侑、上原歩夢、そして優木せつ菜です。
この3人の関係性があくまでメインです。ただ、他のメンバーの魅力が凄すぎて、この3人の関係性を強調し辛いという問題がありました。
そういったこともあって、アニガサキは物語の軸が掴みづらいです。途中、他の同好会メンバーの魅力にやられ、フラフラと軸から離れていき、「結局これって何の話だっけ?」とならないようにしないといけません。
そして、第1話はそれを伝えるための重要な回ですので、必然と重要な情報や表現が多くなっています。
ただ、なんとな~く観ているとそういったことにすら気付かずに終わってしまいます。もちろん、それが普通の見方で悪いという事ではありません。しかし、くどいようですが第1話でわからないことをそのままにしておくと、この先が苦しいのもアニガサキの特徴でもあります。
「細かく観る」ことは邪道だと思っていますが、今回ばかりは詳細に観ていく事を筆者としてはおススメします。
⊡ 変わり始める「日常」
さて、冒頭にこの物語の主人公の1人、高咲侑が視聴者に、これからの物語を観ていくうえでのヒントをくれています。
生まれたトキメキ
あの日から
世界は 変わり始めたんだ!
この時点ではなんとなくわかりづらいですが、大事なのは「トキメキ」そして、「世界が変わった」という言葉です。これがこの物語のテーマです
そして、歩夢と侑の買い物シーンから始まります。何気ない「日常」が描かれているのも、このアニメの特徴です。理由は前回の記事を参照してください。
第1話はそんな何気ない買い物シーンですら重要です。見ていきましょう。
歩夢「う~ん、これはどう?」
侑「イマイチ、トキメキが足りないね」
そういって別の店へと移動する2人。その先にあったショーウィンドウに飾られた衣装に目が留まります。
侑「歩夢、これいいんじゃない? 似合うと思うよ」
歩夢「い、いいよぉ……。可愛いとは思うけど、子供っぽいって」
侑「そうかな? 最近までよく着てたじゃん」
歩夢「小学生の時の話でしょ? もうそういうのは卒業だよ」
一部省略します。何気ない会話ですが、これがラストの非常に重要な伏線になっています。第1話は一瞬たりとも気が抜けません。これは後に解説します。
そして、2人は物語のもう1人の主人公(と筆者は思っている)優木せつ菜と出会います。
⊡ 「日常」を変えたスクールアイドル・優木せつ菜
考察をしている方のブログを読んでみると、2人が「スクールアイドルに出会って日常が変わった」という表現をされている方もいらっしゃいます。
それが間違いだと言うつもりはありませんが、筆者としては「優木せつ菜と出会った」というのが大事だと思っています。
というのも前回の記事で筆者は「スクールアイドルのライブは日常的に行われている」という考察を進めました。その考えを基に考察を進めると、歩夢と侑は何も「スクールアイドルの存在を知らなかった」というわけではないと思います。
それは、高咲侑の「スクールアイドルを『よく知らなかった』」というセリフからもわかります。
ただ当たり前のように存在していたスクールアイドルのゲリラライブも、おそらく今までは2人の目には留まらなかったのでしょう。高咲侑にいわしてみれば、「トキメキが足りない」ということでしょうか。
ただ、2人は優木せつ菜という、圧倒的な存在感を放つスクールアイドルと出会ってしまいました。
それは高海千歌がμ'sと出会ったように、何気ないきっかけで「日常が変わってしまう」という、まさに「世界が変わった」瞬間でもあったわけです。
それだけの存在感を放つ優木せつ菜。もしスクールアイドルに「戦闘力」のような指標があれば、彼女の数値は相当高いモノになっているでしょう。
高咲侑の目には、せつ菜の燃えるような情熱をライブから感じ取ったのでしょう。それが映像でも表現されています。
しかし、パフォーマンスをしている当の本人は……というのが何とも切ない形として後から響いてきます。
さて、これは侑の視点で描かれているので、悠とせつ菜だけが画面上に出ていますが、この場にはもちろん歩夢もいます。
後になってわかる事ですが、歩夢も優木せつ菜に衝撃を受けています。
この時披露された曲「CHASE!」の歌詞「なりたい自分を我慢しないでいいよ」という言葉に大きな影響を与えられたことが、この後の展開でわかります。
ただ今の時点では、はしゃいでいる侑だけが視聴者に印象付けられているので、「歩夢もスクールアイドルに興味を持った」というのが非常にわかりづらくなっています。
⊡ 変わった「日常」が戻る恐怖
授業の小テスト中も、侑はどこか上の空です。後で本人が説明していますが、「せつ菜の歌を聴いたら勉強がはかどったので、小テストも余裕だった」とのことです。
悠はすっかりスクールアイドルに夢中……と言いたいところですが、やはり私としてはこれはどちらかというと「優木せつ菜に夢中」なのではないかと思います。
(よく見ると侑の目がハートになっています)
先の話になりますが、侑は同好会に入ることで、色んな形のスクールアイドルがいることを知ります。それこそ最初はせつ菜だけに夢中だったのですが、同好会のメンバーとの交友を深めていくうちに「スクールアイドル自体に興味をもっていく」というのが侑の成長として描かれています。
侑はせつ菜に夢中であり、歩夢は侑に執着しており、せつ菜はその2人を導いていく……という三角関係が、アニガサキで注目すべき人間関係なのです。
そんな優木せつ菜にすっかり夢中な侑は、せつ菜に会おうとスクールアイドル同好会の部室を訪れます。しかしそこで、生徒会長の優木せつ菜中川菜々から、同好会は廃部になったことが告げられます。
変わり始めたと思っていた「日常」が、自分を変えてくれたせつ菜によって、あっさりと「元の日常」へと戻っていってしまいます。
それは、何も侑だけではありません。ここで元同好会のメンバーのカットを次々と入れているのは、何もメンバー紹介をしたいからというだけではありません。
同好会のメンバーだったしずく、エマ、彼方、かすみも、「元の日常」へ戻ってしまうことが何となく怖いのです(彼方ちゃんはひょっとしたらそうでもなかったかもしれませんが)。
それは、しずくのセリフでわかります。
しずく「明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生来ないのだ! けれども……」
これは太宰治の短編小説「女生徒」からの引用です。
この作品について簡単に説明すると「同じような日々を繰り返す恐怖」を描いた作品となっています。
しずくの演劇のセリフなど、別にシェイクスピアのロミオとジュリエットやハムレットでもいいわけです。
しかし、選択肢などいくらでも存在する中、敢えてスタッフが「女生徒」の一文を引用したのは、やはりせつ菜に変えられた「日常」が元に戻ってしまうことをメンバーと侑が危惧していることを描きたかったからに他なりません。
こうして、アニガサキのキャラクターは優木せつ菜に大きな影響を受け、そして翻弄されていきます。この作品に於いて優木せつ菜がいかに大事なキャラクターなのかがわかります。
そして、侑もまたその胸の内を吐露します。「日常が変わるかもしれない」という期待が破られたことへの落胆が見て取れます。
侑「やっぱり難しいのかな……夢、追いかけるのって。アイドルやるって、そういうことでしょ? 自分の夢はまだ、ないけどさ……夢を追いかけてる人を応援出来たら、私も何かが始まる。そんな気がしたんだけどなぁ……なんてね!」
⊡ 新しい自分 スクールアイドルとしての「明日」
その後に侑と歩夢はショッピングに出かけます。帰り際、こんなセリフがあります。
侑「あのシャツ、どうしよっかなぁ……?」
歩夢「また明日みてみよう」
ここで敢えてまたショッピングのシーンを入れているのは、2人が「優木せつ菜と出会う前」に戻っていることを表現したいからです。歩夢の「また明日みてみよう」というのも、「明日も変わらない『日常』が訪れる」という示唆でもあります。
場面が変わり、侑までもがこう言ってしまいます。
侑「あ、そういえば明日の数学さぁ……」
2人で歩いてる中、歩夢は立ち止まります。これは、歩夢が侑の言っている「明日」へと進むことを止めた事を示しています。このままでは、「スクールアイドル」や「優木せつ菜」のいない「明日」へと向かってしまいます。
歩夢「ふたりで……ふたりで始めようよ!侑ちゃん! 私も見てたの、動画。スクールアイドルの……せつ菜さんのだけじゃなくて、たくさん。本当に凄いと思ったよ。自分の気持ちをあんなに真っすぐ伝えられるなんて。スクールアイドルって、本当に凄い! 私もあんな風にできたら、なんて素敵だろうって」
歩夢「本当は私もせつ菜さんに会ってみたかった。けど、会っちゃったら、自分の気持ちが止まらなくなりそうで、怖かったんだ。それでも、動き始めたのなら……止めちゃいけない。我慢しちゃいけない」
歩夢「わたし、好きなの!」
歩夢「ピンクとか。可愛い服だって、今でも大好きだし、着てみたいって思う! 自分に素直になりたい。だから、観ててほしい」
私はっ!
スクールアイドル、やってみたい!
長いセリフを頑張って引用してみました。
さて、このなんとなく百合っぽい雰囲気に惑わされずに、ちゃんと歩夢の言った事をかみ砕いていきましょう。
まず、歩夢がせつ菜に影響を受けたというのは前述したとおりです。それは歩夢の「あんな風にできたら、なんて素敵だろう」というセリフだけでなく、行動からも見て取れます。
上の画像をみてわかるとおり、歩夢がわざわざ高低差のある階段を、このあと披露する曲のステージにしたのは、明らかに2人が最初に見た「優木せつ菜のステージの再現」に他なりません。
そして、もうひとつ。歩夢の衣装です。
これは冒頭で2人がショッピングしていた時にみた、可愛い衣装です。その時歩夢は「もうそういうのは卒業」と言いましたが、先ほどのセリフからも解る通り、本当はこういった可愛い服を着たかったというのが映像でも表れています。
その根底にあるのは、やはり優木せつ菜の「CHASE!」の「なりたい自分を我慢しないでいいよ」という歌詞でしょう。
以上の事からも、実を言うと歩夢も優木せつ菜に大きな影響を与えられていたというのがわかるはずです。
歩夢がなぜこんなことをするのか。それは、優木せつ菜がそうしたように、自分のステージでも「高咲侑の日常を変えたい」という想いがあるからです。
その結果、侑は代り映えのしない「明日」ではなく、「歩夢」という新たに覚醒したスクールアイドルが存在する「明日」へと向かう世界線へと、踏みとどまることが出来ました。
⊡ 2人で成長していく物語
歩夢「今はまだ……勇気も自信も、全然だから。これが精いっぱい」
さて、このシーンも何となく観てしまうとわからないですね。
歩夢がそう言って差し出したのは、冒頭に侑がショッピング中に「トキメキがイマイチ」と評したカードケース(のようなもの)です。
侑が「完全にトキメイた!」と絶賛するせつ菜と比べれば、自分はこのカードケースの様に「あなたにとって私はまだイマイチ」と言いたいわけですね。
自分に自信がない歩夢らしい表現ですね。そして歩夢はこう言います。
歩夢「私の夢を、一緒に見てくれる?」
そんな「イマイチ」なカードケースを侑は受け取ります。
侑「もちろん! いつだって私は、歩夢の隣にいるよ!」
こうして歩夢はスクールアイドルとしての第一歩を踏み出し、侑は歩夢を応援することを誓ったのです。(結婚しろよ)
⊡ まとめ
さて、第1話を観ていく中で色々と見えてきたものがありますので、まとめましょう。
アニガサキでは、良くも悪くも「優木せつ菜」という一人のスクールアイドルに翻弄されるキャラクターたちが描かれていきます。優木せつ菜は歩夢・侑が影響を受けたスクールアイドルであり、この作品で描かれる「スクールアイドルの代名詞的な存在」と言っても過言ではないでしょう。
歩夢や侑がスクールアイドル(優木せつ菜)を通して、自分たちの「日常」が変わったように、他のメンバーの「日常」も変わっていきます。
他のスクールアイドル、あるいは自分が行うスクールアイドル活動を通して、今まで見えなかったものが見えたり、考え方が変わったり……と、新たな「日常」がそれぞれ始まっていきます。
そうした「スクールアイドルとしての日常」を描いたのがこのアニガサキであり、その新たな日常に対して期待感や、或いは人間関係が変わっていく恐怖というものも描かれています。
そういった日常が変わる瞬間にフォーカスを当てているのがこの作品です。
アニガサキは色んな意味でやはり「日常系アニメ」なのです。これが、筆者の出した答えです。
そして、そんな「日常」の中でスクールアイドルとして成長していく歩夢、侑、そしてせつ菜の人間関係がメインとしてあります。
それにピンとこないのは、前述した通り他のキャラクターの存在感が強すぎるからですし、別にその三角関係を忘れて観てしまっても、成立してしまうからです。
終盤の「強すぎる百合展開」は、視聴者が忘れかけていたその人間関係を嫌でも思い出させる、スタッフの苦肉の策……と筆者は考えています。
というわけで、第1話だけでもう後の考察いらないんじゃないの?と内心思っていますが、次回に続きます(たぶん)。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!
それではまたお会いしましょう。
アディオス!