ラブライブ!スーパースター!! 考察 第5話「パッションアイランド」 ~星に願う前に語りあってみようよ~
ま~た2週間お預けかよッ!!
第5話を観終わった後に、そういう風に漏らしてしまった方々も多いのではないでしょうか。そう、この5話色々な匂わせがあって、完全にその後の期待を膨らませる回だったのです。
こんな状態であと2週間待てなんて……いっそ殺せ……
などと思わず、気を確かに持ち、第5話をあと30回は観て第6話に備えましょう。
というのも、筆者が思うに第6話からはエモーショナルな回が続くと思うからです。
それでは第5話を振り返っていきましょう。
※ここから先はラブライブ!スーパースター!!第5話のネタバレを含みます。まだ本編を視聴していない、またはネタバレが嫌だという人は決して見てはいけません。マジで責任は取りませんので、悪しからず。
※基本的にこの考察はただのおっさんの妄想です。ひとりのラブライバーの解釈であり、これが「正解」であるなどと言うつもりは全くございません。あくまで、妄想・ジョークの類として受け取って頂ければ幸いです。
⊡ 強調され始めるヒエラルキー
冒頭、千砂都がダンスレッスンをしていると、顧問だと思われる先生から結衣ヶ丘の代表として8月に都大会に出てみないかとのお誘いを受けます。
快諾するシーンはないものの、この力強い千砂都の表情から、都大会への出場を心では決めていることが伺えます。もともと千砂都はまだスクールアイドル同好会の正式なメンバーではありません。加えて千砂都が真剣にダンスに打ち込んでいることは、これまでの話を振り返ればわかります。断る理由などあろうはずがありません。
場面は変わって、同好会。屋上が練習場所として開放されたものの、真夏に練習を行うにはあまりにも暑すぎます。なんとか空調設備の整った練習場所を確保できないかという話になります。音楽科のレッスン室ならその条件を満たすと千砂都は提案しますが、「普通科の生徒ではどうせ使わせてもらえない」と早々にかのんは諦めてしまいます。
音楽科の千砂都が頼めば貸してくれるのでは、と提案するのはすみれ。しかし、ここでもこの提案を拒否するのはかのんです。「もしそれで許可が出ても、他の普通科の子に悪い。こっちが『お願い』して使わせて貰ってるのは、良くない気がする。同じ学校なのに」とのこと。やはりこのセリフは、音楽科と普通科の上下関係を意識したセリフにしか聞こえません。
さらに、駄目押しですみれがこう言います。
「でもそういう学校でしょ? 音楽科は『特別』みたいな」
それに対してのかのんの表情は複雑な様子ですが、個人的にはここで千砂都の表情を写さないのが憎らしい演出だと思いました。そのヒエラルキーの上位にいる千砂都本人は、果たしてこの『特別扱い』についてどう思っているのでしょうか。この時点ではあくまでも「視聴者に想像して欲しい。だから千砂都の表情は写さない」ということでしょうか。
さて、少しだけ時間を戻してみると、音楽科・普通科以外のことで揉めている人物が2人いましたよね。そう、唐可可と平安名すみれです。
この2人にはプロとアマという決定的な意識の違いがあります。前回、第4話の記事で書いた通り、ラブライブの世界にもプロのアイドルは存在しますが、スクールアイドルが「プロ」を意識することは殆どありませんでした。今作では明確に「プロフェッショナル」と「アマチュア」という単語を用いて、その線引きを視聴者に意識させようとしています。
普通科・音楽科もそうですが、今後「プロ」と「アマ」というのがより大きなテーマとして描かれるのは間違いないと思います。
⊡ 前作を超えるためのライバルキャラ
第5話でキャラクターの輪郭が徐々に明らかとなったのは、なんといってもライバルキャラのサニーパッションではないでしょうか。良い機会なので、ここでラブライブシリーズのライバルキャラについて考えてみたいと思います。
ラブライブシリーズでは何故ライバルキャラがいるのでしょうか。お話として敵がいた方が盛り上がるというのが単純な回答ですが、その根底にあるのはやはりラブライブの世界ではスクールアイドルが「競技」であり、「敵」がいないことには競技として成り立たないという事でしょう。そういった理由もあって、ライバルキャラを用意しているわけです。
まあ、そんな事は考えれば誰でも辿り着く答えなわけですが、ここからは筆者の勝手な推測です。A-RISE以降のライバルキャラ、つまりはラブライブ!サンシャイン!!以降のライバルキャラは前作のアイドルユニットのイメージを意識していると考えています。
Aqoursのライバルユニットといえば、皆さんご存じSaint Snow。その圧倒的な実力で第7話でAqoursの前に立ち塞がりますが、その実力を以ってしてもイベントでの上位入賞は出来ませんでした。「Saint Snowが負けた」という事実が、μ's以降のラブライブ及びスクールアイドルのレベルの高さの象徴ともなり、物語上非常に大きな役割を担ったライバルキャラでした。
このSaint Snowですが、前作ラブライブ!の主人公・高坂穂乃果が率いるμ'sの代表曲に「Snow Halation」という余りにも有名な曲がありますね。この曲のおかげで、μ'sやラブライブ!には「雪」のイメージが沸き上がるという人も少なくないのではないでしょうか。このSnowの部分を繋げることで、Saint Snowを前作の主人公μ'sの分身の様な形として送り込んだのでは……と筆者は考えています。う~ん、ちょっと強引ですか?笑
因みにですが、「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」では、明確にライバルキャラというものが存在していません。強いて言えばランジュや栞子あたりでしょうが、ライバルと言われても個人的にはピンときません。競技にはライバルが必要と前述しましたが、やはりラブライブに出場していないニジガクメンバーにはライバルキャラは必要ない、むしろ「メンバー全員が仲間でライバル」というコンセプトだからでしょう。というわけで、ニジガクにはライバルキャラはいません。
さて、いよいよスパスタのライバルキャラ(と断言はできませんが)、サニーパッションです。前作ラブライブ!サンシャイン!!はそのタイトル通り、Aqoursが生まれ育った静岡県沼津市・内浦は常夏の太陽のようなイメージがやはり強いです。
サニーパッションは第5話で神津島出身だと明かされました。
神津島は南に位置し、ダイビングなども行っていることから南国のイメージが強いです。この常夏のイメージは、やはりAqoursとどうしても被ってしまいます。
更に加えるならば「パッション」という単語からはニジガクのOP主題歌「虹色Passions!」を彷彿とさせます。
ライバルキャラが、前作の主人公ユニットのイメージを模しているという説を強引に繰り広げましたが、この説を是として考えるとして、何故このようなことをするのでしょうか。それは恐らく今作の主人公たちには、前作に引きずられることなく、寧ろ乗り越えて行って欲しい、という願いが込められているのではないでしょうか。特にAqoursはμ'sの後釜的なポジションでしたので、相当なプレッシャーや批判もあったことでしょう。そういったものを超えていくための仮想敵として、前作のイメージを模したライバルキャラが必要なのだと考えます。
⊡ 力弱いダンス 千砂都の決断
かなり話が脱線したので、本筋に戻しましょう。
同好会のダンスレッスンの内容を見たサニーパッション。なにやら思うところがあったようですが、口には出して言いませんでした。その様子が気になった千砂都は帰り際、2人を呼び止めて話を聞き出します。千砂都は今の同好会が「ラブライブで勝てるか?」という直球の質問を投げかけます。
「歌も良いし、チームとして纏まってもいる。でも勝つのは難しいかもね。どこか自分たちで動いてる感じがしないんだ。特にダンスはね」
とても上手いのにダンスに力強さを感じない。それを確かめるために同好会に接触したのもあったと、2人。加えて、千砂都がダンスレッスンのコーチをしていることが、力強さの無さに起因していると言います。
「今はダンスに関して、皆あなたを信頼して、あなたに頼っている。でもそれでは、いつまでも自分たちで動いていく力強さは生まれない」
さて、これはどういう意味でしょうか。まず、「頼っている」というのはその言葉の通りで、キツい言い方をすれば依存しているとも言い換えれます。現在、同好会のメンバーは千砂都が考えた振付を忠実に再現しているだけにすぎません。つまりは、自分たちで「こう動きたい、ああいう風に動きたい」といったことや、「こういうことを表現したい」という表現においての自主性が感じられないと言っているのではないでしょうか。
サニパのギザ歯、聖澤悠奈はこう続けたうえで、「君がもしメンバーだったら、グループとしては脅威だったけどね」と、今の同好会では脅威になり得ないと、やんわりと諭してしまいます。この言葉の意味も考えてみましょう。
今の千砂都はあくまで片手間に、グループの振付師として助けているといった状態です。グループに100%コミットしていると言えない状況では、メンバーのスクールアイドルに対する想いや意思といったものを、振付師として100%ダンスに反映することは難しいでしょう。だからこそ、千砂都がメンバーだったら、「脅威だったのに」と悠奈は言っているのです。
自分の中途半端なヘルプでは、メンバーのためにならない。そう思った千砂都は、ある決断をします。
千砂都はサニパに誘われたライブにも行かず、夏休みは別行動を取ることをメンバーに伝えます。恐らくですが、この提案をしたのには2つの理由があります。
1つ目は、サニーパッションの「メンバーがダンスに関して、千砂都に頼り切っている」という指摘でしょう。ダンスに関して千砂都に依存してしまっているメンバーから離れることで、少しでも自分たちだけでダンスを表現して欲しいという思いからだと考えられます。
2つ目は、冒頭の都大会に集中するためです。前述した通り、千砂都は100%同好会にコミット出来ている状態とは言えません。千砂都はダンスで結果を出さなければならず、そんな中途半端な状態でずるずると関わっては、千砂都自身にとっても良くないからです(この辺りは、残念ながら葉月恋の忠告通りになってしまったわけです……)。どちらか一方を選ばなければいけない状態で、ダンスを選んだという、至極当たり前の選択なわけです。
⊡ 薄れゆく結びつき かのんと千砂都
神津島に向かう途中の船で、かのんは「新曲の歌詞が思いつかない」と、若干のスランプに陥っていることを明かします。
「曲と振付は出来てるから、今回は皆とちーちゃんの事とか書こうと思ったんだけど……」
さて、このセリフも何気に重要です。かのんは千砂都とメンバーのことを歌詞に綴ろうと考えています。
この第3話の記事で私は「かのんは繋がりの無い人間を意識すると歌えなくなる」と書きましたが、この作詞に関してもそれが言えるのではないでしょうか。
今回、かのんは千砂都とメンバーの事を歌詞にしようとしていますが、肝心の千砂都はメンバーではありません。それどころか、夏休みに別行動を取ってしまっている事で、千砂都は一時的にメンバーとの関係が非常に薄い人物になってしまったとも言えます。そんな状態の中で、メンバーと千砂都を想って歌詞を書こうとしても、その繋がりにどうもピンと来ずになかなか歌詞が思いつかない。そんな状態ではないでしょうか。
恐らくそのことに、かのんは何となく気づいています。その証拠、といっては何ですが、神津島で向かえた夜、かのんは可可にこう言います。
「ちーちゃんって何なんだろう?」
「なんて書けばいいんだろう? 一緒にやってるわけでもないし、コーチでもないし……」
そのもやもやとしたかのんの気持ちに可可は気付いています。改めて可可はかのんに千砂都をメンバーに迎え入れることを提案します。それは恐らく、同好会の実力的なレベルアップだけでなく、薄れゆくかのんと千砂都の関係をはっきりとさせたいという願いもあるのでしょう。
可可は、「千砂都は何故メンバーに入らないのか」をかのんに聞きます。するとかのんは、千砂都との過去を語りだします。
「わたし、かのんちゃんの出来ない事を出来るようになる! かのんちゃんの歌みたいに、大好きで夢中になれるもの。私も持てるように頑張る」
かのん「そう言って始めたのがダンス」
可可「そうだったのですか……」
はい、どうでしょうか。可可もなんとなく納得してますが、この会話をそのまま読んでも、「なぜ千砂都がメンバーにならないのか」の説明になっていません。
これはもう本当に憶測でしかありませんが、千砂都にとってスクールアイドルもしくはダンスでさえも、ひょっとしたら「大好き」で「夢中になれる」ものとは言えないのかもしれません。というのも、「かのんが出来ない事」として始めたのがダンスであり、それは自主的に望んで始めたとは言い難いからです。とはいえ、これは本当に数少ない言葉からの憶測ですので、なんとも言えません。今考えてもあまりしょうがない事なのかなぁ、と思います。
そして、エンディング。ダンスのレッスンに励む千砂都のカバンには「退学届」と読める用紙が……。そして、よく見るとこの用紙、2枚あります。
何を想って退学届を用意しているのか、現時点では判断できる材料が少なすぎます。冷静に考えて、退学というのは余りにも極端な判断ですからね。これも、今の時点ではあれこれ考えてもしょうがない事ですね。色々と妄想を膨らませれば、結構歩夢ちゃん並みの黒く、重い幼馴染への執着のように見えなくもないですが……。まぁ、第6話を気長に待つしかないでしょう。
⊡ 星に願いを 円陣の意味
最後に、筆者が今回気になったのは、第5話ではやたらと「星」が出てきています。
神津島が天体観測スポットとしても有名だという流れで、星を眺めています。この場面で、かのんが「ちーちゃんにも見せてあげたかったなぁ……」と呟くことで、可可はかのんが千砂都の加入を本心ではやはり望んでいると気付くシーンでもありました。
エンディング直前、意味ありげに星空のカットが挿入されます。話の流れだけを汲めばこのカットは要らないようにも見えますが、やはり表現したい何かがあって入れたのだと思われます。
そして極めつけは、本編で初めて出てきたLiellaの円陣とその掛け声です。
因みに、この円陣は「未完成」で、葉月恋が加入して初めて完成されます。その完全な形は「星」を描いていることは、EDの映像を観ればわかります。
「うぃっす、うぃっす、うぃっすーっ!」という掛け声は恐らく、というかほぼ間違いなく「星」から連想される英語表現、”Wish on a star"、つまりは「星に願いを込める」というところから来ていて、「うぃっす」という千砂都の挨拶と英語の"Wish"を掛けたものでしょう。有名なところではディズニー映画「ピノキオ」の主題歌「星に願いを」(原題:When you wish upon a star)があり、この歌を連想する方も多いでしょう。
今作のタイトルでもる「スーパースター」ということから、やたらと星が出ていますが、かのんや可可は無意識に千砂都を想い、想いが通じるよう星に願っている、とも取れます。
しかし、この行動は正しい正解ではないような気がします。
というのも、私たちはアニメが始まる前に「どうすればいいかの答え」を受け取っています。そう、Liellaのファーストシングル「始まりは君の空」です。
その歌詞の一部にこうあります。
星に願う前に
語りあってみようよ
トキメキを分かちあいたいよ
まずは自分の気持ちをさらけ出して、語り合う事の大事さは、前作ラブライブ!サンシャイン!!でも描かれていたテーマでした。果たして千砂都とかのんは、どのような言葉をお互い交わすのでしょうか。
というわけで、キリが良いので今回はここまでです。
読んでくださって、本当にありがとうございます!
それでは次回、第6話「夢見ていた」でお会いしましょう!